糖尿病の血糖値の基準と入院の目安!高い時と低い時の症状も!
糖尿病というと、血糖値が高いことで起こるということは知っている方が多いと思いますが、その基準や正常値がどのくらいかというのをきちんと知っている方は少ないでしょう。
というのも、血糖値やHbA1cといった糖尿病の診断に使われる検査数値は、健康診断の時以外に私達の目の前に現れることはほとんどないからです。
ですが、血糖値が高い・低いというのは、糖尿病でなくても時に様々な症状として体に現れることがあり、場合によっては入院が必要となることもあります。
また、ひとたび糖尿病と診断されたら、血糖値というものを毎日のように測定して推移を表やグラフで記録したりする必要が出てきます。
そこで今回は、糖尿病の血糖値について、診断基準や治療の目標値、入院の目安といった基礎知識の他、治療に役立つ食後の血糖値を下げる食べ物などについてをご紹介していきます。
目次
血糖値とはどんなもの?
■知っておきたい血糖値とHbA1c
まずはじめに、糖尿病について知識を深めていく上で、欠かすことができないのが「血糖値」と「HbA1c」についてをご紹介しておきましょう。
【血糖値】
血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度のことで、mg/dL(ミリグラムパーデシリットル)という単位で表されます。
通常、ブドウ糖は小腸で食べ物の中から取り出された後、血流に乗って体の様々な部分へ運ばれ、エネルギー源として使用されるものです。
しかし、血液中のブドウ糖の量というのは多すぎても少なすぎても体に悪影響があるので、通常はインスリン(血糖値を下げる)やグルカゴン(血糖値を上げる)などのホルモンによって適切な量になるように常に調整が行われています。
【HbA1c】
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)とは、血液中のヘモグロビンにブドウ糖が結びついたもので、検査で出てくる%の値はどのくらいの割合のヘモグロビンが糖と結合しているのかを表しています。
そして、血液中に糖が多ければそれだけHbA1cの割合も増えますので、この値が高ければ血糖値が高いということになり、糖尿病を診断する際の目安のひとつとなっているのです。
また、ヘモグロビンはおよそ120日程度で新しいものと入れ替わるため、このHbA1cの値は過去1~2ヶ月の間の血糖値がどのような状態だったかを知る手がかりとなります。
■高血糖で起こる症状
高血糖は体に次のような悪影響を及ぼすことがあり、その症状はそのまま糖尿病の症状であるとも言えますが、糖尿病と診断された人でなくても、清涼飲料水やアイスクリームといった糖分の多いものを大量に摂取していると急性の高血糖状態となってしまいます。
そして、高血糖が続いた状態を続けていると次のような症状が現れ、重症になると非常に危険な状態になることもあります。
【初期の高血糖】
・喉が渇く
血糖値の上昇により、水分を摂って血液を薄めることで正常値を保とうとする体の反応です。
・水を大量に飲む
・頻尿・大量の尿が出る
・だるい、疲れやすい
【中期の高血糖】
・食べているのに痩せる
体の中の糖をエネルギーとして使うことができずに脂肪がエネルギーとして使われるためです。
【高血糖による急性症状】
・嘔吐、腹痛、強い倦怠感、意識障害、昏睡など(糖尿病性ケトアシドーシス)
脂肪がエネルギーとして使われることで生じるケトン体という物質によって血液が酸性になります。
・多尿、体重減少、倦怠感、意識障害、昏睡など(高血糖高浸透圧症候群)
感染症などをきっかけとした急激な血糖値上昇によって極度の脱水症状が起こります。
■低血糖で起こる症状
低血糖は糖尿病におけるインスリン治療の副作用などで起こる他、過度のダイエットなどでの不適切な食事制限、登山やマラソンといった長時間のスポーツでも起こる場合があります。
【初期の低血糖】
・異常な空腹感
・あくび
【中期の低血糖】
・無気力
・倦怠感
・冷や汗
・動悸
・ふるえ
・顔面蒼白(または紅潮)
【重症の低血糖】
・意識消失
・異常行動
・けいれん
・昏睡
糖尿病と診断される数値はどのくらい?
■血糖値とHbA1cの値で決まる
糖尿病の診断は次のような検査における血糖値とHbA1cの値で、総合的に判断します。
1 早朝空腹時血糖126mg/dL以上
2 75g傾向ブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dL以上(※)
3 随時血糖値200mg/dL以上
4 HbA1c6.5%以上
この4つのうち、どれか1つにあてはまる場合には「境界型」もしくは「糖尿病型」という、いわゆる糖尿病予備軍です。
そして、後日再度検査を行い、同じように糖尿病型と判定された場合には、糖尿病が確定します。
ただし、1~3のうちの1つと4が当てはまった場合や、すでに高血糖による典型的な自覚症状などが出ている場合には糖尿病がその場で確定します。
(※…75gのブドウ糖を摂取し、そこから2時間経った時点での血糖値を測る検査での数値です)
■糖尿病の人が目標とする血糖値は?
通常、健康な人の血糖値は空腹時で70~109mg/dLで、血糖値が一時的に上昇する食後であっても140mg/dL未満程度です。
そして、糖尿病の人は血糖値をなるべくこの値に戻すことが治療の目標となりますが、糖尿病の進行具合によって次のような目標が定められており、その目標値を目指して血糖値のコントロールを行います。
なお、HbA1cの値については次に示す値以外にも、血糖値正常化を目指す際には6.0%未満、合併症予防のためには7.0%未満、副作用などで治療を強化することが難しい場合には8.0%未満という目標値設定もあります。
・優
空腹時血糖:80~110mg/dL未満
食後2時間血糖:80~140mg/dL未満
HbA1c:6.2%未満
・良
空腹時血糖:110~130mg/dL未満
食後2時間血糖:140~180mg/dL未満
HbA1c:6.2~6.8%
・可
空腹時血糖:130~160mg/dL未満
食後2時間血糖:180~220mg/dL未満
HbA1c:6.9~7.3%で不十分、7.4~8.3%で不良
・不可
空腹時血糖:160mg/dL以上
食後2時間血糖:220mg/dL以上
HbA1c:8.4%以上
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糖尿病で入院が必要になる場合とは?3つのタイプを解説
■糖尿病を詳しく調べるための「検査入院」
糖尿病での検査入院とは、糖尿病の診断の他、合併症が起きていないかなどの精密検査を一括で行うためのものです。
というのも、糖尿病は全身の様々な部分に合併症が起こるため、それをチェックしていくのにも時間がかかりますし、合併症などは早期に対処しないと気づかないうちに進行して治療が難しくなってしまうことがあるため、一度にまとめて検査をしたほうが治療の方針などを決めやすいという利点があります。
そのため、この検査入院では血液検査や尿検査の他、心臓・腎臓・足といった合併症の出やすい部分の検査や、1日の中で血糖値がどのように推移しているかといったこともチェックするようです。
なお、入院期間は3泊4日ほどになるのが一般的なようですが、症状や検査結果によっては期間が延長される場合があるようです。
■著しい高血糖ならば「治療のための入院」
先程「高血糖で起こる症状」でご紹介した、糖尿病性ケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群などは外来のみで治療することは難しいケースがあり、また放置すれば昏睡などの危険な状態に陥る可能性もあるため、入院しての治療が必要となる場合が多いようです。
また、糖尿病の治療に効果が現れず、高血糖の状態が続いている場合や、合併症が悪化している場合なども治療のための入院が必要となることがあります。
なお、入院する期間は症状にもよりますが、およそ2週間~1ヶ月程度になるようです。
■糖尿病との付き合い方を学ぶ「教育入院」
教育入院とは、糖尿病という病気についての知識や、食事療法や運動療法といった血糖値コントロールのための方法を学ぶために入院することを言います。
なぜこのような入院が必要となるのかというと、糖尿病とは日々の生活の積み重ねによって改善も悪化もする病気で、特定の薬を飲めば治るというものではないため、病気についてよく理解するとともに血糖値コントロールの方法やその大切さも学ばなければならないからです。
そして、この教育入院では糖尿病についての知識を学ぶ他、血糖値と食べ物の関係や運動療法の実技、薬の飲み方や使い方、合併症が起こりやすい足のケアなど、病気と付き合っていくための内容を学びます。
なお、入院期間はおよそ1~2週間程度で、自分から希望して入院することもできるようです。
(関連記事:糖尿病の教育入院の内容や費用!効果や期間と医療保険についても)
糖尿病治療に欠かせない血糖値測定とは?
■血糖値測定のメリット
糖尿病では、毎日の血糖値を測定することには次のようなメリットがあります。
1) 日常生活での血糖値の動きがわかる
2) 治療の目標値に向けての血糖値コントロールがしやすくなる
3) 合併症の予防や進行防止ができる
4) 実際の血糖値を見ることで治療へのモチベーションがわく
5) 通院の回数を減らすことができる
特に、インスリン注射を行っている人や、妊娠を考えている人、妊娠中の人にとっては血糖値を知っておくことが重要です。
■血糖値を記録しよう
血糖値を測定する際には、専用の血糖値測定器を使用し、食事ごとなどの決まったタイミングで測定します。
なお、血糖値測定器は、指先などを針で刺して少量の血液をセンサーにつけることで血糖値を測定するもので、持ち運びもできるようなコンパクトなものも多くあります。
そして、血糖値を記録することで、病院に行った時に医師からのアドバイスを受けたり、より自分に合った治療方針を決めてもらうことができますので、血糖値を測定したら必ず記録するようにしましょう。
なお、自分で書き込める記録用紙のテンプレートや、血糖値の推移をグラフ化してくれたり、飲み薬の管理なども行うことができるスマートフォン用アプリやパソコン用ソフトなどもありますので、そういったツールを活用して、忘れずに記録を行いたいですね。
■測定器は自費?保険適用?
血糖値自己測定器は、保険適用になる場合とそうでない場合がありますので、病院で確認することをおすすめします。
なお、自己測定器が保険適用となるのは、基本的にインスリン注射を行っている人となり、この場合には測定器と医師が指定した測定回数に応じた消耗品(針など)は保険で給付されます。
それ以外の人も病状によっては保険が適応される場合もありますので、病院で一度確認してみるといいでしょう。
また、保険でカバーされない場合には自費での購入となりますが、本体でおよそ1万円前後、消耗品には毎月1万円前後かかってしまうようです。
しかし、これらの費用は確定申告の時に医療費控除の対象となりますので、領収書はきちんと保管しておいてくださいね。
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血糖値を下げるのに薬以外で有効なものは?
■食事療法
糖尿病での食事療法は、「毎日3食きちんと食べ、食事の時間や量を一定にする」「栄養バランスが偏らないようにする」「適正な量のカロリーを摂る」ということが基本です。
つまり、食べすぎずに健康的な食生活を送ることが食事療法の大原則となるわけですが、食べ物の中には血糖値を下げる効果が期待できるもの、逆に血糖値を上げてしまう可能性があるものがあります。
そして、血糖値を下げる効果が期待できるには、次のようなものがあります。
【食物繊維を多く含むもの】
糖の吸収をおだやかにする作用があります。
・きのこ類
・海藻類
・根菜類
・大麦
【クロムを多く含むもの】
体内での糖の代謝を正常化する作用があります。
・きのこ類
・豆類
・レバー
・エビ
・ビール酵母
【その他】
・たまねぎ
・お酢
■運動療法
運動療法は食事療法と並んで糖尿病の治療の基本であり、初期や糖尿病予備群であれば薬を使わずに、この2つによって血糖値をコントロールするように指導される場合もあります。
そして、運動療法の基本は「全身を使うような有酸素運動をする」「毎日続ける」ということで、これによって期待できる主な効果は筋肉を増やして糖の代謝を正常化したり、高血圧の改善などです。
なお、運動の内容については特に決められていませんが、「歩く」ということが一番簡単で、続けやすいと言えるでしょう。
ちなみに、歩く場合の目安は30分程度を1日2回、または1日およそ1万歩程度とされていますが、体力や年齢などに応じて、無理せずに続けられる程度の時間や距離を見つけることが大切です。
まとめ
いかがでしたか。
糖尿病と診断される血糖値の基準は、空腹時の血糖値が126mg/dL以上、随時血糖値が200mg/dL以上で、少なくとも160mg/dL以下を目標に食事療法や運動療法を行うことになります。
また、入院が必要となるのは検査や治療、そして糖尿病の知識などを学ぶという目的がありますが、治療が必要となるのは基準よりもはるかに高い血糖値が出ている場合や、高血糖による糖尿病性ケトアシドーシスなどの危険な症状が起こる可能性がある場合のようです。
そして、糖尿病の治療には、自分の血糖値を測定して記録することや、血糖値を下げる食べ物を積極的に食事に取り入れたりすることなど、病気に対しての正しい知識を持つことが大切になります。
ぜひ、今回の記事を糖尿病の治療を開始するきっかけとして、ご自分からも医師と相談しながら積極的にいろいろな情報に触れてみてくださいね。
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