百日咳の症状で大人と子供の違いや治療法!感染経路と潜伏期間も

百日咳とは、百日咳菌という菌の毒素が原因となって起こる呼吸器の感染症で、激しい咳や痰などの症状が現れます。

なお、以前は子供に多い病気で、学校などでは今も出席停止の措置が法律で定められていますが、近年は乳幼児期に行った予防接種の効果が弱まった大人の感染が増えていることが問題になっています。

というのも、同じ百日咳でも症状は大人と子供で熱などに違いがあり、同じように咳が出る風邪や喘息などの病気と間違いやすいため、本人も百日咳だとは気づかずに自然治癒してしまっているケースが多いと考えられているのです。

しかし、百日咳は感染力が非常に強く、仕事に行った先で集団感染を引き起こしてしまったり、また乳幼児が感染すると後遺症が残るような重い合併症を起こすこともあるため、きちんと病院で治療を受けるべき病気です。

そこで今回は、百日咳の大人と子供それぞれの症状をご説明するとともに、診断基準や抗体検査などの検査方法、抗生物質などの治療に使用する薬や、予防のためのワクチンについてもご紹介していきます。

スポンサーリンク

百日咳とはどんな病気?

細菌による感染症

百日咳とは、百日咳菌という細菌によって引き起こされる呼吸器の感染症で、名前の通り咳が特徴的な症状の病気です。

ちなみに、百日咳の「百日」は、100日間(約3ヶ月程度)に渡って症状が続くということに由来しています。

なお、百日咳は一年を通じて発生し、中でも春から初夏にかけては患者が増える傾向にある他、地域において数年おきに流行することがあります。

そして、この病気は従来小さな子供(特に乳幼児)に多く見られ、子供の病気だと考えられてきました。

そのうえ、感染すると重症化しやすく、また生後6ヶ月未満の場合には最悪の場合命を落とすリスクもあるため、日本をはじめとした多くの国では乳幼児の時に予防接種を行っています。

しかし、最近は予防接種による免疫がなくなってしまった大人が感染するケースが増えており、問題になっています。

他の病気とは咳に違いがある

百日咳の咳は、発作性けいれん性咳嗽(がいそう)という、特徴的な咳が続きます。

まず、短い間隔で咳が連続して起こるスタッカートという状態になり、その後急に息を吸い込むためにヒューというウープと呼ばれる笛のような音が聞こえます。

また、咳が連続して起こることによって非常に体力を消耗するだけではなく、顔が赤くなったり、むくんだりする他、眼球結膜(いわゆる白目の部分)や鼻から出血したり、呼吸ができなくなることで唇が青くなるチアノーゼが現れたりといった、さまざまな症状が現れるのも特徴です。

ちなみに、呼吸の時に音が鳴る病気には喘息がありますが、あちらは息を吸う時ではなく吐く時に音がします。

なお、このスタッカートとウープが百日咳の一連の発作であり、これをレプリーゼと呼びます。

しかし、この特徴的な咳は百日咳にかかったら必ず現れるというものではなく、そのことが百日咳の診断を難しいものにしています。

感染経路は唾液や鼻水

百日咳の感染経路は飛沫感染というもので、感染した人のくしゃみや咳などに含まれる唾液や鼻水などのしぶき(飛沫)に接触することで感染します。

そして、感染力は非常に強く、かかった場合には同居している人に免疫がなければほぼ9割程度の確率で感染することから、時に学校や職場などでは集団感染が発生することもあります。

また、大人と子供の症状の違い(次に詳しくご紹介します)から、大人が百日咳だと気づかないまま子供に感染させてしまっているという可能性があるようです。

スポンサーリンク

百日咳の大人と子供の症状の違いと潜伏期間

子供の症状

子供の百日咳は、1~2週間の潜伏期間の後に次のような症状を経て回復に向かいます。

ちなみに、百日咳は学校保健安全法において第二種の学校感染症に指定されており、「特有の咳が消失するまで又は5日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで」の期間は出席停止となります。

・カタル期(1~2週間程度続く)

初期の症状で、はじめは軽い風邪のような症状が見られますが、次第に咳が強くなっていきますが、百日咳の特徴と言われるような発作性の咳はまだあまり見られません。

また、この時期が最も感染力が強いので、誰かに感染させてしまっている可能性が高い時期でもあります。

・痙咳(けいがい)期(約2~3週間程度続く)

百日咳の症状がピークになる頃で、ひどい時には1日に平均10回以上もの発作性けいれん性咳嗽が見られます。

また、咳の発作は夜間に起こることが多く、咳のために眠れないだけではなく、呼吸困難を起こしたりする他、嘔吐や肋骨の骨折、脱水症状などが見られることもあり、それらのために入院が必要となることもあります。

そして、このような発作は生後6ヶ月未満の乳児や、5歳以上の子供、そして成人には見られません。

そのため、乳児の場合には息を止めているような状態からチアノーゼ(酸素の欠乏により皮膚や唇などが青紫色に変化すること)やけいれんを起こし、その後に呼吸が止まってしまうといった症状になることもあるようです。

それだけではなく、乳幼児では肺炎や脳症といった合併症を起こし、命に関わるような状態となってしまうこともあります。

・回復期(2~3ヶ月程度続く)

激しい発作の回数が減り、時々咳が止まらなくなるといった状態になることはあっても次第に咳は治まってきますが、半年程度の間は風邪などをきっかけに激しい咳き込みが見られることがあります。

大人の症状

大人の百日咳についても、基本的には子供と同じく1~2週間程度の潜伏期間を経た後に症状が現れますが、多くの場合は風邪程度の症状で、子供とは違って重い発作が起こることはほとんどありません。

そのため、呼吸困難を起こしたりといった重症に至ることもないのですが、治療がきちんと行われていないと喉の痛みや倦怠感、微熱などといった症状が1年以上も続いてしまうことがあります。

また、たとえ症状が子供よりも軽くても体からは百日咳菌を排出していますので、ワクチンの接種が済んでいない乳幼児などに感染した場合には深刻な状態になることもあり、注意が必要です。

ですので、風邪の咳がやたらと長引くといったことがあれば、念のために医療機関を受診することをおすすめします。

そして、もし百日咳だと診断された場合には、子供の場合の基準と同じく治療によって咳が治まるまでは仕事に行ったりするのは控えるようにしましょう。

スポンサーリンク

百日咳の病院での検査方法や治療方法は?

検査方法

百日咳の検査方法には主に以下の3種類があり、それぞれ検査にかかる期間や精度などに違いがあります。

なお、これらの検査において「培養検査」「血液検査」が陽性で、百日咳に特徴的な症状があるなどの診察結果がある場合には百日咳であると診断されますが、明確な診断基準はありません。

・培養検査

鼻の奥に細い綿棒を入れて中をぬぐい、そこにどのような菌が存在しているのかを培養して調べます。

そして、ここで百日咳菌が見つかれば百日咳と確定診断ができますが、発症してから時間が経ってしまうと検出が難しくなってしまい、確定には至らないということが多いようです。

また、検査してから結果がわかるまでに1週間ほどかかります。

・血液検査

血液中の白血球とリンパ球の数や、細菌などに感染した時に作られる抗体(タンパク質の一種)の数を調べ、それによって感染しているかどうかを判断します。

また、抗体やリンパ球などの数にどれだけの変化があるかを調べるには通常2回の採血が必要なので、結果がわかるまでに2~3週間が必要です。

・LAMP法

培養検査のように鼻の奥からサンプルを採取して、特殊な装置を使って遺伝子を増幅して検査を行います。

そして、精度も高く、最短3日で結果を手にすることができるのですが、あまり普及しておらず、一部の病院でしか実施できないというのが欠点です。

治療方法

百日咳は細菌による感染症ですので、治療には早期にエリスロマイシンやジスロマックなどの抗生物質の使用が有効で、一般的には2週間程度に渡って服用します。

また、家庭では咳を誘発しないように湿度(乾燥させない)や室温(20℃以上にしておく)などに注意をしておくことや、タバコの煙やホコリなどを避けることが大切です。

なお、百日咳の治療では一般的にマクロライド系と呼ばれる種類の抗生物質が使用されますが、近年はこのマクロライド系の抗生物質が効かなくなってしまった細菌が増えており、百日咳菌も例外ではありません。

そのため、はじめに処方された抗生物質が効いていないと感じる場合には、一度医師に相談して薬を変えるなどの対応をしてもらうようにしましょう。

スポンサーリンク

百日咳を予防することはできる?

生後3ヶ月からの四種混合ワクチン

百日咳の予防にはワクチンの接種が有効で、日本では生後3ヶ月から百日咳のワクチンを含む四種混合ワクチンを4回に渡って接種することができます。

この四種混合ワクチンには、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオのワクチンが含まれており、生後3ヶ月から12ヶ月の間に20~56日の期間をおいて3回、そして3回目を接種してから半年~1年後に4回目を接種します。

なお、乳幼児の時にはこの四種混合ワクチン以外にもヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、ロタウイルスワクチン、B型肝炎ワクチンなど接種しておくべきワクチンがたくさんありますので、同時に接種するようにするといいでしょう。

ちなみに、四種混合ワクチンを含むいくつかのワクチンは公費負担となりお金がかかりませんので、自治体からのお知らせが届いたら忘れずに接種に行くようにしてください。

大人用の百日咳ワクチンはある?

百日咳にはワクチンによる予防が有効ですが、実はワクチンによって獲得した免疫は最後に接種した時から5~10年ほどで弱まってしまうと言われています。

しかし、乳幼児に接種する四種混合ワクチンを大人に接種してしまうと、ジフテリアワクチンに含まれる成分による重い副反応が起きやすくなるため、大人が四種混合ワクチンを使用することはできません。

そのため、欧米ではワクチンの配分量を変えた思春期以降に使用できるジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチンが開発・使用されています。

一方で、日本では大人が使用できる百日咳のワクチンは承認されていないため、もし思春期以降で百日咳のワクチンを接種したい場合には欧米で使用されているものを輸入して接種している医療機関を探すことになります。

なお、成人用の三種混合ワクチンは主に海外旅行などのための予防接種を行ってくれるトラベルクリニック(旅行医学外来)が扱っていますが、日本では承認されていませんので、万が一があった場合に国からの救済措置はありません。

ですので、日本旅行医学会のホームページなどできちんと情報を集めて、信頼のできる病院で接種を行うようにしてください。

日本旅行医学会のホームページはコチラ!

うつらない・うつさないためには何ができる?

ワクチン以外に百日咳を予防する方法としては、飛沫感染という特徴からマスク、手洗い・うがいなどが考えられますが、百日咳は感染力が非常に強いために家庭内に感染した人がいる場合には予防法として十分ではありません。

しかし、海外からの輸入ワクチンを接種する医療機関は限られますし、また任意接種となるため高額ですので、家族の中に百日咳と診断された人がいる場合には他の家族にも抗生物質を処方してもらい、それを予防のために服用するという方法が一般的です。

なお、百日咳に感染した人がマスクをするのは周りの人に飛沫感染を起こさせないという点においては有効だと考えられますので、マスクを極力使用し、周りに感染させないようにすることが大切です。

まとめ

いかがでしたか。

百日咳は激しい咳の発作を伴う感染症ですが、大人が感染した場合には子供とは違って咳の発作が起こらずに咳がひどい風邪程度の症状になってしまうという違いがあります。

また、百日咳は非常に感染力が強く、飛沫感染で多くの人に感染させてしまう可能性がありますので、百日咳と診断された場合には抗生物質による治療をできるだけ早く行い、マスクの使用などと合わせて感染を広げないように注意したいものですね。

そして、大人が感染に気づかないまま乳幼児に感染させてしまうと、重症化して命の危険が生じる場合がありますので、風邪が治ったのに咳だけが残っている時などには百日咳を疑うという知識を持っておくことが大切です。

ぜひ今回の記事を参考に百日咳についての知識を深め、感染予防に役立ててくださいね。

スポンサーリンク

このページの先頭へ