糖尿病の合併症の種類と起こる順番!機序や症状と予防の仕方も!
糖尿病の恐ろしいところは、三大合併症と言われる足の皮膚の壊死や目の白内障、腎臓の機能が低下して起こるネフローゼ症候群以外にも、心臓や肝臓の病気や脳梗塞などさまざまな部分に合併症が起こることです。
このように恐ろしい病気の名前ばかり並ぶと、糖尿病の合併症はどのような機序でどれくらいの割合の人に起こるのか、また発症後の生活や寿命はどのくらいの期間になるのかなど、いろいろと不安になってしまいますよね。
そこで、今回は糖尿病の三大合併症やその他の合併症の起こる順番やメカニズム、症状といったことや、早期発見のための検査や治療法、予防法、腎臓障害発症後の食事などの合併症に関する情報をご紹介いたします。
目次
糖尿病の合併症の種類・症状と発生のメカニズム
■3大合併症
◇糖尿病性神経障害
糖尿病性神経障害とは、高血糖が引き金となって体の運動神経、感覚神経、自律神経といった末梢神経に障害が起き、様々な症状が現れる合併症のことです。
【なぜ起こる?】
はっきりとした原因は解明されておらず、様々な説がありますが、以下のようなことが一因となるのではないかと指摘されています。
・高血糖の状態が続くことで、「ソルビトール」という余計な物質が神経細胞に蓄積される
・高血糖による動脈硬化で末梢の毛細血管まで血液が届かず、神経細胞に酸素や栄養などが届かなくなる
【症状は?】
末梢神経にはそれぞれ決まった役割があり、例えば運動神経には「筋肉を動かす」、感覚神経には「痛みや温度などを感じ取る」、自律神経には「心臓や胃腸の働きを整える、血圧や体温をコントロールする」などです。
そして、これらの神経に障害が起こると、その場所や障害を起こした神経の種類によって次のような様々な症状が現れます。
ですので、糖尿病性神経障害の症状は人それぞれ、個人差の大きいものとなります。
・手足のしびれ、痛み、冷え、熱感(感染症や潰瘍、壊疽に進行し、切断が必要となることも)
・足の感覚が鈍る(「裸足なのに靴下を履いている感じ」とよく表現されます)
・こむら返り
・立ちくらみ
・外眼筋麻痺(物が2つに見える、まぶたの腫れや目の奥の痛みなどが起こります)
・顔面神経麻痺
・無痛性心筋梗塞
・消化器の機能低下(胃もたれ、下痢や便秘など)
・排尿困難
・インポテンツ
◇糖尿病性網膜症
糖尿病性網膜症とは、高血糖によって網膜の細い血管が詰まったり変形したりすることで、眼底出血や網膜剥離などの障害が起こる合併症です。
【なぜ起こる?】
高血糖の状態が続くと、網膜に張り巡らされている細い血管が変形したりすることで網膜に酸素が届かなくなります。
すると、網膜は新しい血管を作って酸素を取り込もうとするのですが、この新しい血管は脆いために出血しやすく(眼底出血)、その後にかさぶたのような膜ができるとそれが網膜を引っ張ることで網膜剥離が起こってしまいます。
【症状は?】
初期にほとんど自覚症状はありませんが、進行してくると次のような症状が現れてきます。
・視力の低下(進行すると失明することも)
・目のかすみ
・飛蚊症(視界に小さな虫が飛んでいるように見える)
◇糖尿病性腎症
糖尿病性腎症とは、高血糖が原因の動脈硬化によって腎臓の糸球体と呼ばれる部分が障害を受け、その結果腎臓の機能が低下してしまう合併症です。
【なぜ起こる?】
高血糖によって血管に負荷がかかって動脈硬化が毛細血管まで進み、腎臓が障害を受けると、糸球体という体の老廃物をろ過する役割の部分が正常に機能しなくなります。
すると、腎臓の機能が低下し、体に様々な症状が現れます。
【症状は?】
初期のうちはほとんど自覚症状がありませんが、進行してくると次のような症状が現れるようになり、さらに悪化すると慢性腎不全を起こして人工透析なしでは生きられなくなってしまいます。
・蛋白尿
・まぶたや足のむくみ、強い全身倦怠感、食欲不振(ネフローゼ症候群)
・精神的不安定
・悪心
・掻痒感
■その他の合併症
◇動脈硬化による病気
高血糖によってダメージを受けるのは毛細血管ばかりではなく、太い動脈などにもその可能性があります。
そして、このような太い血管に動脈硬化が起こると、コレステロールが溜まりやすくなり、血液の通り道が狭くなってしまいます。
すると、血流に無理な力がかかるようになり、血管の内側の細胞が壊れてその場に血栓と呼ばれる血の塊ができますが、この血栓は血流に乗って流れていき、血管を詰まらせてしまうことがあるのです。
これが頭の血管を詰まらせれば脳梗塞、心臓の血管を詰まらせれば心筋梗塞や狭心症、足の血管を詰まらせれば閉塞性動脈硬化症となり、どれも重い後遺症や最悪の場合には死亡する可能性のある病気です。
これらは糖尿病の人以外にも起こりうるものですが、健康な人よりも動脈硬化を起こしやすい糖尿病の人にとってはより一層リスクが高くなります。
◇脂肪肝、肝硬変、肝臓がん…糖尿病と肝臓の合併症
肝臓は余分なブドウ糖を脂肪に変えて保存する役割があり、余分なブドウ糖が多い=高血糖の状態が続くと肝臓は脂肪肝となってしまい、それが進行すると肝硬変や肝臓がんになるおそれがあります。
また、高血糖によって増える活性酸素で細胞が傷つけられる、高血糖ががん細胞の増殖を助けているといった可能性も指摘されています。
実際に、糖尿病患者の死因の17.5%が肝疾患だったというデータや、糖尿病の人はがんになる確率が20~30%高いといった研究結果も出ていますので、肝臓の状態にも注意することが必要です。
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合併症は糖尿病の末期?合併症が起こる順番
■糖尿病の期間が長くなれば合併症のリスクが増えていく
糖尿病において、合併症が起こると末期というような考えがあるのは、おそらく糖尿病が無症状のまま進行していき、自覚できるような症状が出てきた時には取り返しのつかない状態になっていることが多いからでしょう。
しかし、糖尿病の合併症というのは、診断されてから何年も経って現れるものばかりではなく、次のような順番で起こると言われています。
【糖尿病の合併症が起こる順番】
・糖尿病性神経障害 … 発病から0~5年
・糖尿病性網膜症 … 発病から7~8年
・糖尿病性腎症 … 発病から10~13年
もちろん、この年数には個人差がありますが、このように神経障害、網膜症、腎症の順に合併症は起こってくるようです。
中でも、糖尿病性神経障害は糖尿病を発病してすぐから発症するリスクがありますので、決して末期の症状だとは言えません。
ですから、糖尿病と診断されたら医師の指導のもと、早急に対策を行うべきだと言えるでしょう。
糖尿病の合併症の検査方法とは?
■3大合併症の場合
◇糖尿病性神経障害の検査
糖尿病性神経障害の検査は、主に次のようなものがあります。
・アキレス腱反射
アキレス腱を診察用のハンマーで軽く叩き、足がまっすぐに伸びるという反射が起こるかどうかを見る検査で、糖尿病性神経障害によって感覚神経に異常がある場合には反射が起こらず、足が動きません。
・振動覚検査
震わせた状態の音叉を体に当て、振動が止まったかどうかを申告してもらうことで振動を感知できるかを見る検査で、やはり感覚神経に異常がある場合には振動を感じにくくなります。
・呼吸心拍変動係数
心電図を使用して安静時と深呼吸した時の脈拍を調べ、自律神経に異常がないかを見る検査で、糖尿病性神経症によって自律神経に異常がある場合には安静時と深呼吸したときの脈拍の変動が少なくなります。
◇糖尿病性網膜症の検査
糖尿病性網膜症の検査は、眼底検査という眼球の奥(網膜)を調べる検査によって行います。
もし、網膜に異常がある場合には、白い斑点や出血、網膜の血管に小さなコブなどが認められますが、自覚症状がないことも多いようです。
しかし、出血がひどい場合などには急に視力が低下することもありますので、糖尿病と診断されたら自覚症状がなくても数カ月おきに眼底検査を受ける必要があります。
◇糖尿病性腎症の検査
糖尿病性腎症は、尿検査と血液検査をすることによって発見することができます。
・尿検査
尿蛋白、尿中アルブミン排泄量を調べることで、糖尿病性腎症が起こっているかどうかを判断することができます。
ちなみに、尿中アルブミンは初期の段階から数値が上がり、尿蛋白はある程度症状が進行してから数値が上がってきます。
また、糖尿病で起こることが多い膀胱炎などの尿路感染症が起こっているかもチェックすることが可能です。
・血液検査
腎機能は血液検査からも知ることができ、クレアチニンという物質が増えていないか、体の老廃物がどれだけ尿として排泄されているかなどを調べます。
■その他の合併症の場合
その他の合併症はほとんどが動脈硬化によるものですので、主に動脈硬化を調べるための検査を行い、肝機能などは血液検査によって判断します。
主に、動脈硬化を調べる検査は以下のようなものがあります。
・頸動脈エコー
頸動脈にエコーを当てて、血管壁の様子や血管の詰まりなどを直接見るための検査です。
・血圧脈波検査(CAVI)
血管の固さなどを調べることにより、全身の動脈硬化の進行や血管年齢を調べることができます。
・足関節上腕血圧比(ABI)
足の動脈に動脈硬化が起こって痛みや冷えが生じる閉塞性動脈硬化症を調べることができます。
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合併症の治療方法や生活上の注意点は?
■血糖値コントロールは最優先、腎症の場合は食事にも配慮を!
合併症の治療は、基本的には血糖値のコントロールを行ってそれ以上進行しないように最善を尽くすというのが最優先です。
というのも、高血糖による血管などへのダメージが原因ですので、それを治すためにはまず血糖値などを適正な値までコントロールするということが必要になるからです。
ただし、それと合わせて腎症の兆候がある場合には食事のタンパク質を制限したり、網膜症の場合にはレーザーで部分的に網膜を焼くことで新しい血管を減らしたりする治療(光凝固療法)が行われることがあります。
そして、神経障害の場合には、小さな傷を見落として感染症などを起こさないように、足などを清潔にする、保湿ケアをする、こまめに傷がないかを目で確認し、異常があればすぐに医療機関を受診するといった日々のセルフケアが大切になります。
■運動は続けるべき?やめるべき?
糖尿病において運動療法は血糖値コントロールや体力低下予防のために大切ですが、合併症を起こしている場合には医師と相談し、無理のない範囲で続けるようにすることが大切です。
なぜならば、無理に運動してしまうことで、合併症が悪化してしまうことがあるからです。
ですので、主治医とよく相談し、自分の体力や症状に合わせたオーダーメイドのメニューを用意してもらうようにしてください。
また、いつものメニューであっても運動中に気分が悪くなる、体のどこかが痛む、低血糖の症状が出るなどといった異常を感じた場合にはすぐに運動をやめて、主治医に症状の報告をするようにしましょう。
合併症にかかったら、寿命はどうなる?
■糖尿病にかかると寿命は短くなる
アメリカの疾病予防管理センターで過去にまとめられたデータによると、糖尿病患者の平均寿命は糖尿病ではない人と比べて4.6年短く、日常生活に必要な基本動作(食事や着替え、排泄や入浴など)などへの障害が6~7年早く進行するとされています。
また、余命が10年短くなる、糖尿病性腎症が悪化して人工透析が始まったらそこからの余命は5~10年程度であるというデータもあるようです。
これは、糖尿病の合併症は悪化すると失明(網膜症)や足の切断(神経障害など)といった生活の質を大きく低下させてしまう状態となること、人工透析が必要なほどに腎臓の機能が悪化していると血管の状態も悪化して人工透析を長く続けるのが難しかったり、糖尿病に加えて人工透析のための食事制限を行う必要があることなどが挙げられます。
さらに、大血管の合併症による脳梗塞や心筋梗塞は命に関わり、たとえ助かっても重い後遺症を伴うものが多いこと、糖尿病の人は感染症が治りにくいことなども理由でしょう。
■健康な人と変わらない寿命は可能!
糖尿病にかかり、合併症が悪化してしまうと残念ながら寿命が短くなってしまうようですが、糖尿病になったら必ず寿命が短くなってしまうということではなく、健康な人と変わらない寿命を送ることは可能です。
そのためには、医師の指示を守って毎日適度な運動やバランスの良い食事を心がける、薬をきちんと使用するといった糖尿病の治療をしっかり行うことです。
というのも、糖尿病というのは合併症も含め、初期の段階ではほとんど自覚症状がないために自分が病気であるという認識ができず、運動や食事制限などを行わなかったりしてしまう場合があります。
そして、高血糖の状態が続き、自覚症状が現れる頃には治療が難しいほどに悪化してしまうということがほとんどですので、しっかりと医師の話を聞き、治療を続けていくことができれば健康な人と同様の寿命も難しくありません。
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糖尿病の合併症を予防する方法とは?
■予防もやはり血糖値コントロールが大切!
合併症は、高血糖の状態が長く続くことによって発症するので、予防も治療と同様に血糖値コントロールが大切です。
ですので、運動療法や食事療法をきちんと続けるとともに、医師から薬やインスリン注射などが処方された場合にはきちんとそれを使用するようにしてください。
また、定期的に通院して主治医に血糖値コントロールの結果を報告したり、血液検査や尿検査、眼底検査を受けることも合併症の早期発見には有効です。
■合併症を予防するための血糖値の目標
合併症予防などのために、日本糖尿病学会はHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー、過去1~2ヶ月の血糖値の状態がわかる値)の基準値を次のように定めています。
・血糖値正常化を目指す=HbA1cが6.0%未満
・合併症を予防する=HbA1cが7.0%未満
・薬の副作用などで治療強化が難しい場合=HbA1cが8.0未満
なお、合併症を予防する場合、このHbA1c7.0%未満という値を血糖値にするとおよそ空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dLとなります。
ですので、まずはこの値を目標として血糖値コントロールを行い、合併症を予防していきたいものですね。
まとめ
いかがでしたか。
糖尿病の合併症には3大合併症と呼ばれる細い血管の障害によって起こるものと、それ以外の太い血管の障害などによって起こるものがあります。
そして、3大合併症を起こる順番に並べると、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症となりますが、どれも悪化すると生活の質を大きく下げたり、寿命を縮めてしまうものです。
しかし、糖尿病の合併症は高血糖の状態が長く続くことによって血管がダメージを受けて発症するものですので、治療や予防には血糖値コントロールが最優先となります。
ですので、ぜひ今回の記事を参考に合併症についての知識を深め、また日々の運動療法や食事療法といった血糖値コントロールや、病院での定期的な検査によって合併症を予防・早期発見するようにしてくださいね。
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