糖尿病のインスリン注射の方法や費用と寿命!打たないとダメ?

%e7%94%bb%e5%83%8f1糖尿病のインスリン注射は、インスリンがうまく働かない人にとって食事の制限や運動、そして飲み薬による治療が効かない場合などに血糖値を下げるための有効な治療法です。

しかし、新薬が次々と開発されていることもあり、ランタスをはじめとした薬の種類や単位や回数、注射を打つ場所など覚えることがたくさんあって大変ですよね。

ですので、一度説明を受けただけではインスリン注射の方法がわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

また、糖尿病のインスリン薬には費用がいくらかかるのか、どれくらいの期間注射を続けていかなければならないのかといったことや、寿命が縮むといった話を耳にして不安に思っている方もいることでしょう。

そこで今回は、インスリン注射が必要になる基準の数値から注射の方法、低血糖などの副作用や打たないとどうなるのかといった様々な疑問を、合併症の危険などと合わせてご紹介していきます。

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糖尿病のインスリン注射治療とは?

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■足りないインスリンを外から補う治療法

インスリン注射治療とは、血糖値を下げる働きを持つホルモンであるインスリンを注射によって体に直接補う治療法です。

本来、健康な人であればインスリンは膵臓で作られますが、糖尿病の人はこのインスリンが分泌されなくなったり、働きが悪くなっているために血糖値がコントロールできなくなってしまっているため、外からインスリンを補うことで血糖値を正常に保つ効果を期待することができます。

■インスリン注射が必要になる人とは?

糖尿病になったら必ずインスリン注射が必要になるというわけではなく、主に次のような条件に当てはまる人がインスリン注射の対象になります。

【絶対的適応】

インスリン注射をしないと命に関わる場合で、具体的には以下のような場合です。

・1型糖尿病である

・糖尿病性昏睡を起こした

・糖尿病の飲み薬に対してアレルギーなどの副作用が出た

・肝臓や腎臓に重い障害がある

・妊娠中(血糖値がコントロールできていない場合)

・重い感染症を起こしている

・大きなケガや手術の後

・点滴で栄養を取っている状態である

【相対的適応】

インスリン注射なしでもすぐに命に関わるわけではないが、血糖値コントロールのために必要な場合で、具体的には以下のような場合です。

・2型糖尿病で、極度の高血糖(空腹時血糖値250mg/dL以上、随時血糖値350mg/dL以上)である

・糖尿病の飲み薬の効きが悪い

・痩せ型で栄養状態が良くない

・ステロイド治療中に高血糖状態である

■インスリン製剤は種類によって効果時間が違う

注射で使用するインスリン製剤は、効果が現れる時間の早さによって次のように分類することができます。

1:超速効型

ノボラピッド、ヒューマログ、アピドラなど

効果が現れるまでおよそ10~20分、最大作用時間はおよそ1~3時間、3~5時間程度作用が続く

2:速攻型

・ノボリンR、ヒューマリンRなど

効果が現れるまでおよそ30分、最大作用時間はおよそ1~3時間、8時間程度作用が続く

3:中間型

・ノボリンN、ヒューマログN、ヒューマリンRなど

効果が現れるまでおよそ1.5時間程度、最大作用時間はおよそ4~12時間、24時間程度作用が続く

4:持効型

・トレシーバ

注射してからは常に同じ程度の効果が48時間程度続く

・ランタス、ランタスXR

効果が現れるまでおよそ1~2時間程度、常に同じ程度の効果が24時間程度続く

・レベミル

効果が現れるまでおよそ1~2時間、常に同じ程度の効果が24時間程度続く

5:混合型(超速効型もしくは速攻型と中間型を混ぜたもの)

混合する製剤の種類や割合により、効果が現れるまでの時間や持続する時間が異なる

インスリン注射の方法とは?

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■注射は1日何回必要か

インスリン注射の回数は、使用するインスリン製剤の種類や量も含めて糖尿病の状態や患者の生活スタイルなどを考慮した上で医師が決定するため、人によって1日に必要となる回数が異なります。

一般的には1日に必要となる注射の回数は1~4回の間で、この中で一番基本的なのが毎食前の3回+持効型1回の4回ですが、血糖値コントロールが比較的安定している場合などは1日1回の注射だけという人もいるようです。

なお、2型糖尿病の人は飲み薬と注射を併用するというパターンもあります。

■注射器の使い方

インスリン注射は専用の注射器を使用して、食事の前などに自分で打つ方法が一般的です。

また、専用の注射器には非常に細い針が使用されており、ほとんど痛みを感じずに注射することができるようになっています。

なお、注射器は製剤が入ったカートリッジが初めからセットされていて注射針だけを交換するものや、カートリッジと注射針を交換するようになっている持ち運びしやすいペン型のものが主流です。

そして、ペン型注射器による注射の手順は次のようになります。

1. カートリッジをセットする必要のあるものは注射器にカートリッジをセットする

2. ペン先のゴム部分をアルコール綿でよく拭く

3. 注射針をまっすぐ取り付ける

4. 注射針を上に向け、空打ちをする(空気抜きとインスリンが出ることを確認する)

5. 注射する単位に合わせてダイヤルをセットする

6. 注射する(針を刺して注入ボタンを押し、そのまま数秒置いて、ボタンを押したまま針を抜く)

7・使用した注射針を外す

■注射する「単位」とは?

インスリン注射においては、1回に注射する薬の量を「単位」で表し、例えば「毎食前に20単位注射する」といったように使われます。

この「単位」というのは、インスリン製剤が作られ始めた当初に効果が安定せず、グラムなどの一般的な単位で表すことができなかった時に、生き物(ウサギ)に投与した際の反応を手がかりに決められたものです。

なお、現在は製造技術の進歩によってインスリン製剤の効果は安定していますが、引き続きこの「単位」というものさしが使われています。

ちなみに、1単位は0.01ミリリットルに相当し、1単位のインスリンによって下がる血糖値は薬の種類やその人の体質によって10~80mg/dL程度です。

■注射を打つ場所に注意

インスリン注射をできる場所は決まっていますが、毎回同じ場所に注射しているとその部分が固くなったり腫れたりして薬剤がきちんと体に届かなくなるおそれがあるので、少しずつ場所をずらしながら打つようにしなければなりません。

なお、インスリン注射をする場所は、インスリンの吸収速度が速い順にお腹、上腕の外側、お尻、太ももの外側になりますが、お腹に打つのが一般的です。

そして、お腹にインスリン注射を打つ場合には、へそを中心とした直径5センチの範囲を避け、前回注射した場所から2~3センチ離して針を刺すようにします。

また、インスリンは皮膚のすぐ下に注入しますので(これを皮下注射といいます)、皮膚を軽くつまみ上げて針が深く入らないようにして注射するようにしましょう。

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インスリン注射の注意点とは?

■インスリン注射の副作用を知っておこう

インスリン注射には、次のような副作用が知られています。

・低血糖

・肥満

・脂質の代謝異常

・動脈硬化の促進

・血圧上昇

この中で、インスリン注射を行っている人がもっとも陥りやすいのが低血糖で、食事と注射のタイミングが噛み合っていない時などに起こります。

そして、低血糖になると空腹感や冷や汗、動悸、顔面蒼白といった軽めの症状から、頭痛や嘔吐、けいれんや昏睡といった重度の症状へと進行してしまいます。

そのため、普段からブドウ糖や砂糖を含むものを持ち歩き、低血糖だと感じたら早めにそれを口にするなどの対策をとっておく必要があるでしょう。

インスリン注射の費用はどのくらい必要?

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■インスリン注射にかかる費用の平均と内訳

インスリン注射による治療を行っている人のほぼ半数の人が月に1万~1万5千円程度の治療費を負担していると言われていますが、中にはそれ以上の額を負担している人もいるようです。

なお、この額の内訳はおおむね以下のようになります。

・在宅自己注射指導管理料

・血糖自己測定器加算

インスリン注射による治療には血糖値測定が必要なので、測定回数に応じて料金が加算されます。

・通院時の再診料、検査料(血液検査、尿検査など)

・薬代、注射器代

1ヶ月に1万円以上というのはかなりの出費になりますが、年間の医療費が所得の5%または10万円を超えた場合には確定申告の際に領収書などを添えて手続きを行うことで最高200万円までの所得控除が受けられる「医療費控除」という制度がありますので、そういったものを活用してみるといいかもしれませんね。

インスリン注射で寿命はどうなるの?

■糖尿病患者の寿命を縮めるのはインスリン注射ではなく合併症

インスリン注射は糖尿病治療における最後の手段だと思っている方も多く、またインスリン注射を続けていると寿命が縮まってしまうという話もあるようですが、そのようなことはありません。

なぜかというと、糖尿病の人が高血糖状態のままでいることのほうが、よほど寿命を縮める結果になってしまうからです。

例えば、高血糖の状態では血管に負担がかかることによって動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高まるだけでなく、目や腎臓などにも悪影響を及ぼし、進行すると失明や人工透析といった事態に陥ります。

また、手足の抹消神経へ充分な血流が届かないために、熱い・冷たい・痛いといった感覚が鈍ってしまうことでケガに気づかず、重い感染症にかかってしまったり患部が壊死してしまうことで足の切断をしなければならなくなる場合も多いようです。

ですので、糖尿病で寿命を縮めないためには「血糖値をコントロールする」ということが絶対の条件であり、インスリン注射はそれを助けてくれるものですので、食事療法などと合わせて上手に付き合っていくことが大切になります。

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インスリン注射を打たないとどうなる?

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■高血糖が続くと命に関わる状態になることもある

インスリン注射をやめてしまい、食事療法や運動療法などもしていないと、もちろん血糖値のコントロールができなくなって高血糖の状態が続いてしまい、時には命に関わる症状が起こることがあるので注意が必要です。

まず、血糖値が上昇すると口が乾く、多飲・多尿(水分を大量に摂りたくなり、尿の量が増える)、全身の倦怠感などの症状が起こってきます。

そして、それが悪化した場合には嘔吐・腹痛などの症状が現れはじめ、さらに進行すると昏睡状態になることがあり、これがよく耳にする「糖尿病性ケトアシドーシス」の症状です。

また、高齢の方は体内の水分が尿に移動して極度の脱水症状と高血糖状態になる「高血糖高浸透圧症候群」といった症状が現れることもあります。

ですので、どんな理由があっても、自己判断でインスリン注射を打たないということは絶対に避けるべきだということを覚えておいてください。

■病気で食事が摂れない場合の注意点

風邪や胃腸炎などで食欲がない、食事が摂れないといった場合にも、自己判断でインスリン注射をやめてしまうことは絶対に避けるようにしてください。

というのも、痛みなどのストレスは血糖値を上げることにつながりますし、下痢などで脱水症状を起こした場合にも血液が濃縮されて血糖値が上がってしまうからです。

ですので、高熱や胃腸炎などの症状が出た場合には早目に医療機関を受診し、自宅では安静にするとともに、こまめな水分補給や消化の良い炭水化物(おかゆやうどんなど)を少しずつ口にするようにしましょう。

そして、普段から健康管理に注意し、風邪などの予防を心がけてくださいね。

■血糖値コントロールができればインスリン注射をやめられる場合も

体がインスリンをほとんど作ることができなくなってしまう1型糖尿病の人にとって、インスリン注射は絶対に必要なものですが、2型糖尿病の人は血糖値が安定するようになってくればインスリン注射をやめることができる人もいます。

しかし、自己判断でインスリン注射をやめたりしてしまうと、先程ご紹介したような思わぬトラブルを引き起こす可能性があるので、絶対に避けてください。

ですので、日々の血糖値をきちんと記録した上で、主治医とよく相談してインスリン注射を続けるかどうかを決めるようにしましょう。

まとめ

いかがでしたか。

糖尿病のインスリン注射は、痛みなどが少ないように設計された専用の注射器を使って自分で体に注射する方法が主流です。

また、インスリン注射による治療を行う場合には、薬代や検査費などを合わせておよそ月に1万~1万5千円程度の費用がかかります。

しかし、糖尿病による合併症で寿命を縮めないための大切な治療ですので、病院からの説明をきちんと聞いた上で行い、決して自己判断でやめたりしないようにしましょう。

もし、自己判断でやめたりしてしまうと、血糖値の上昇によってさまざまな症状が現れ、最悪の場合には昏睡状態に陥ることもあります。

ですので、日々の血糖値をきちんと測定した上で、医師のアドバイスを聞きながら上手にインスリン注射と付き合うようにしてくださいね。

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