糖尿病網膜症の原因と治療法!見え方などの症状と治る可能性も!

%e7%94%bb%e5%83%8f1糖尿病の合併症の中でも気が付かないうちに深刻な状態になるもののひとつに、網膜症があります。

この糖尿病網膜症は、放置していると運動などをきっかけに眼底出血を起こして最悪の場合には失明してしまうこともあり、よく言われる「糖尿病で失明する」という原因です。

しかし、近年は検査によって早期発見でき日帰りのレーザー手術などの適切な治療を行えば、完全に治るとまでは行かなくても症状の進行を抑えて予後の生活を悪化させずに済むようになりました。

そこで、今回は糖尿病網膜症の原因や見え方の変化などの初期症状や治療法の種類、また予防法についてをご紹介していきます。

ぜひ糖尿病網膜症についての理解を深め、予防や早期発見の助けにしてくださいね。

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糖尿病網膜症の原因とは?

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■高血糖によって網膜の血管が傷つく

糖尿病の合併症によって網膜にさまざまな障害が起こる糖尿病網膜症の原因は、高血糖の状態が続くことによって網膜の細い血管が傷つき、出血や変形を起こすからです。

というのも、血糖値が高い状態というのは血液がドロドロになっている状態であり、血液がスムーズに流れにくくなるため、途中で詰まったりして末梢の細い血管には血液が届かなくなっていきます。

そして、目の網膜に張り巡らされた細い血管に血液が届かなくなってしまうと、網膜は血液から酸素を受け取ることができずに酸欠状態に陥るのです。

すると、網膜では酸欠状態を解消しようと新しい血管(新生血管)を作って血流を増やそうとするのですが、この新しい血管はもろく、些細なことですぐに出血を起こしてしまいます。

つまり、網膜の血管が詰まりそれに伴ってできた新しい血管の出血や、新しく作ろうとして血管が変形をすることによって網膜にダメージが及ぶことが、糖尿病網膜症の原因だといえます。

初期症状は?糖尿病網膜症の3つの段階

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■単純糖尿病網膜症

単純糖尿病網膜症とは、糖尿病網膜症の中でも初期の段階に当たり、細い血管が変形したり、小さな出血(眼底出血)が起きている状態です。

また、血管から漏れ出たタンパク質や脂肪が網膜に沈着し、硬性白斑と呼ばれるシミのようなものを作っていることもあります。

なお、この時点での自覚症状はほとんどありませんので、定期的に眼底検査を受けていなければ発見することができないでしょう。

■増殖前網膜症

増殖前網膜症とは、先ほどの単純糖尿病網膜症が進行したもので、血管が多数詰まってしまったために網膜が酸素不足から新生血管を作り出す準備を始める段階です。

具体的には、静脈が異常に腫れあがったり毛細血管が変形したりする他、血管が詰まって血液の流れが滞っている部分が白くなって見える軟性白斑と呼ばれるものが現れます。

なお、目のかすみや視力の低下といった自覚症状が現れることがありますが、この段階でも症状が現れない人も多いようです。

■増殖網膜症

増殖網膜症とは、増殖前網膜症がさらに進行し、網膜や硝子体(眼球の中の大部分を占める透明なゼリー状の組織)に新生血管という本来ならば存在しないはずの血管ができ、またその新生血管が網膜の表面や硝子体の中に出血を起こす、糖尿病網膜症としては重症の段階です。

また、この段階になると出血も大きくなり、また新生血管からしみ出た成分などから増殖膜と呼ばれるかさぶたのようなものができ、それが網膜を引っ張ることで網膜剥離(牽引性網膜剥離)を起こすことがあります。

なお、この段階では飛蚊症という視野に黒い影や虫が飛んでいるように見える症状や、出血の場所や範囲によっては急激な視力の低下、カーテンがかかったように視野が欠けるなどといった症状が起こるようです。

そして、この段階では失明の危険もありますが、治療をしても症状の進行を抑えることができない場合もあります。

糖尿病網膜症の治療方法は?

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症状の段階に合わせた治療法

◇血糖値コントロール

血糖値コントロールは糖尿病において最も大事な治療ですが、初期の単純糖尿病網膜症においても血糖値コントロールをきちんと行うことで症状が改善する場合があります。

そのため、ごく軽い単純糖尿病網膜症では特に治療を行わず、経過観察とする場合もあるようです。

また、増殖前網膜症においても血糖値コントロールは重要になりますので、まずは食事療法、運動療法、薬といった日々の血糖値コントロールをきちんと行うようにしましょう。

ただし、運動療法に関しては血圧が上がったり血流が増加することで悪化する可能性がありますので、不安な場合は医師にどのような運動をしたらいいか相談することをおすすめします。

さらに、低血糖をきっかけとして眼底出血が起こることもありますので、高血糖はもちろん、低血糖の状態にも気をつけるようにしてください。

◇網膜循環改善薬などの服用

単純糖尿病網膜症の治療では、血糖値コントロールとともに症状の進行を抑えるための飲み薬による治療が行われる場合があります。

ちなみに、処方される薬は医師によって違いますが、血管の壁を強くする血管強化薬や、細い血管の流れを良くする抹消血管拡張剤やビタミンE製剤といった薬の他、漢方薬なども使われるようです。

そして、この時点までで症状が抑えられずにさらに進行してしまうと、外科的な治療法が行われることになります。

◇レーザー光凝固術

レーザー光凝固術とは、増殖前網膜症や増殖網膜症の治療で使われるもので、レーザー光を当てて患部を熱で焼き固める治療法です。

主に、増殖前網膜症の軟性白斑や、増殖前網膜症の新生血管などに対してこれを行うことで、血液を必要とする部分をなくして新生血管の発生を防いだり、新生血管そのものをなくすということが目的になります。

ちなみに、レーザー光は1か所につき直径0.2~0.5ミリ程度の小さな点で、1回の手術でこれを数十から数百か所、場合によっては数回に分けて千か所以上にレーザーを当てることもあるようです。

なお、早い時期に受ければそれだけで効果はありますが、これは症状の進行を止める治療であって視力を回復させる治療ではなく、網膜を焼いたことによって視力が低下してしまうというケースもあります。

しかし、失明を避けるためには非常に大切な治療ですので、受ける際にはきちんと医師の説明を聞き、疑問点などはきちんと解消してから臨むようにしてください。

◇硝子体手術

硝子体手術とは、増殖網膜症において硝子体に出血が及んだり網膜剥離が起こった場合に、視力を残すために硝子体や増殖膜を切除する手術です。

この手術では、眼球の白目部分に手術器具を挿入する穴を複数開けて、そこから硝子体の出血などが起こった部分や増殖膜を切除したり、眼球の形を保つための灌流液と呼ばれる液体を入れていきます。

そして、その後は網膜剥離を起こしている場合には網膜を元の位置に戻してからレーザーで固定したり、症状に応じて灌流液(かんりゅうえき)を水やガス、オイルなどに置き換えますが、最終的には眼球内から出ている房水と呼ばれる液体に置き換わり、これが硝子体の役目をするようになります(硝子体は再生しません)。

なお、視力が戻るまでには数週間から数ヶ月かかり、見え方が安定するまでに最長で1年程度はかかります。

また、レーザー光凝固術などを併せて行っている場合には、術後に視力が下がってしまうケースが多いようです。

日帰り手術はできる?

糖尿病網膜症の治療で行われるレーザー光凝固術と硝子体手術は、どちらも日帰りで行うことが可能です。

中でも、レーザー光凝固術は数十分程度で、複数回のレーザー照射が必要な場合には通院して治療を行うことになります。

一方、硝子体手術は日帰りでも可能なのですが、術後の診察のために10日間ほどの短い間に何回も診察に行く必要があります。

また、眼内にガスやオイルを注入した場合には、術後数日はなるべくうつ伏せの状態を保っておく必要があるため、そのような状態が困難だったり、何度も診察に来ることが難しい場合には10日前後の入院が必要になるようです。

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糖尿病で気をつけるべきその他の目の病気

■糖尿病黄斑浮腫

糖尿病黄斑浮腫とは、これまでにご説明した糖尿病網膜症のどの段階においても発症することのあるもので、網膜にある黄斑という網膜の中心部分にむくみが生じて視力が低下したり、視野の中心部が歪んで見えたりするといった症状が現れます。

なお、原因は毛細血管のコブや、毛細血管からしみ出た血液成分が網膜内に溜まってしまっていることや、高血糖によって硝子体が縮んでしまい、黄斑とその周辺の網膜がそれに引っ張られてしまうことなどが挙げられます。

そして、治療はレーザー光凝固術や、硝子体手術、またはVEGF(新生血管を作ろうと促す物質)の働きを抑える薬やステロイド薬を眼球に注射するといった方法が症状に応じて選択されます。

■白内障

白内障とは、目の中でレンズの役割を果たしている水晶体という部分が濁ってしまい、そのために視界が白く霧がかかったようになって物が見えにくくなる病気です。

そして、白内障は老化が大きな原因のひとつとされ、主に中年以降の人に多く発症しますが、糖尿病の人は老化よりもかなり早く白内障にかかることがあり、中には30~40代で手術が必要となる人もいます。

なお、一度濁ってしまった水晶体は元に戻ることがないため、治療法は手術によって水晶体を砕いて取り除き、人工の眼内レンズと置き換えるというものが主流です。

また、日帰り手術を行う病院も多く成功率の高い手術ですので、気になる症状がある場合には一度眼科医に相談することをおすすめします。

■緑内障

緑内障とは、視神経や視野が変形してしまうことによって視野が狭くなったり、欠けたりする症状が出る他、失明する確率が非常に高い病気です。

なぜ視神経や視野が変形してしまうのかということについては、まだはっきりとはされてはいませんが、眼球の固さ=眼圧が上昇することが原因のひとつとされており、治療はこの眼圧を下げることが主体になります。

なお、この眼圧は房水という眼球内を循環する液体によって保たれていますが、糖尿病ではこの房水の出口である隅角という部分が新生血管によって塞がれてしまうことで房水が循環できなくなって眼圧が上昇し、それによって視神経にダメージが及んでしまいます。

そして、治療法としては目薬や飲み薬などによる薬物療法の他、レーザーなどによる手術などがありますが、確実に治せるという方法はなく失明してしまうことも多いようです。

そのため、早期の段階で治療が始められるように定期的な検診を受けることや、レーザーで新生血管の発生を予防するといった治療を適切な時期に行うことが大切になります。

糖尿病網膜症の予後はどうなる?

■網膜症=失明ではないけれど要注意

網膜症にかかると最終的には失明するというのは間違いではないのですが、これは糖尿病そのものや糖尿病網膜症に対して何の治療もせずに放置していた場合がほとんどであり、早い段階から適切な治療を行っていれば症状の進行を食い止めて視力の低下を最小限にくい止めることが可能です。

実際に、重度の糖尿病網膜症でほぼ失明状態だったという人でも、血糖値コントロールと手術によって視力が回復したという例もあります。

一方で、治療を中途半端な状態でやめてしまった人は、その後症状が悪化してしまったというケースもあるようです。

ですので、糖尿病の治療をきちんと行いながら、眼科にも定期的に通院することや、自分でも糖尿病網膜症の正しい知識を得て、眼科で症状に応じた適切な治療を行うかどうかが、予後の状態を大きく分けることになると言えそうです。

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糖尿病網膜症の予防法は?

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■血糖値コントロールと定期的な検査が鍵

糖尿病網膜症は糖尿病の合併症ですので、予防にいちばん大切なのは症状の大元となる糖尿病の治療をしっかりと行うことだと言えます。

ですので、食事療法や運動療法、薬物療法などをきちんと行い、血糖値の状態をよい状態に保つことを心がけるようにしてください。

ただし、急激に血糖値を下げたりすると網膜症が悪化するというデータがありますので、医師とよく相談しながら少しずつ目標値に近づけていくようにしましょう。

そして、糖尿病網膜症はかなり症状が進行しない限りは自覚症状が現れないため、症状が現れてから眼科に行ったりすると、自分が思っている以上に悪化しているということがあります。

そのため、糖尿病の治療のために内科に通うのと同時に定期的に眼科にも通い、眼底検査などを受けて自分が気づかない段階の症状を発見、治療をしてもらうことが大切です。

まとめ

いかがでしたか。

糖尿病網膜症は高血糖によって網膜の毛細血管が詰まり、血流が届かなくなることで新生血管ができ、それが出血することなどが原因で起こります。

なお、症状はかなり進行するまでは無症状で、視力の低下やカーテンがかかって見えるというような見え方の異変が生じる頃には失明寸前まで悪化しているということがあるようです。

しかし、レーザー治療や硝子体手術などを適切な段階で行うことで、視力の低下は最低限にとどめられ、メガネなどで矯正すれば通常通りの視力をたもつことも可能になっています。

ですので、普段から血糖値コントロールをきちんと行うとともに、定期的に眼科へ検査に通うことが有効な予防法だと言えるでしょう。

ぜひ今回の記事を参考に糖尿病網膜症についての知識を深めて、目を守ることを心がけてくださいね。

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