糖尿病の治療薬の種類と一覧表!副作用や併用する際の注意点も!

%e7%94%bb%e5%83%8f1糖尿病では、食事や運動以外にも治療薬によって血糖値を下げるという方法がありますが、糖尿病の治療薬は非常に種類が多く、また場合によっては複数を併用することもあるため、副作用などの注意点や使い分けを覚えるのが大変ですよね。

また、近年は新薬も出ており、糖尿病の治療により効果のある薬があるのか知りたいという方も多いのではないでしょうか。

そこで、今回は糖尿病の治療薬を薬理作用によって分類しながら一覧表にしてご説明するとともに、第一選択、第二選択といった薬を選択する際のガイドラインや併用禁忌の薬についてもご紹介していきます。

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糖尿病で薬物治療が適用となる場合は?

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糖尿病だと診断されたらすぐに薬を飲まなければならないというわけではなく、薬物治療が行われるのは、運動療法や食事療法といった治療をしばらく続けても血糖値が下がりにくい場合に行われます。

一般的には、数ヶ月間運動療法や食事療法を続けてみても、血糖値が目標として設定した値まで下がらなかった時に、薬物療法を併用するようです。

なお、糖尿病の薬物治療にはインスリンそのものを補うインスリン注射の他、体に働きかけて血糖値の上昇を抑えたりする効果のある飲み薬も使われ、患者の状態や体質を見て医師がどの薬を使うかを決めています。

糖尿病の治療薬一覧

■インスリンの働きを良くする薬

◇ビグアナイド薬

ビグアナイド薬とは、肝臓でブドウ糖が作られる働きを抑えてインスリンの働きを良くするとともに、腸からブドウ糖が吸収されるのを抑えたりする効果を持つ薬です。

というのも、肝臓には空腹時に備えてエネルギーとして他の物質からブドウ糖を作り出して血液中に送り出す働きがあるのですが、この働きはインスリンによって抑制されているため、インスリンがうまく働いていないと大量のブドウ糖が血液中に送り出されてしまうからです。

なお、副作用としては下痢、嘔吐、食欲不振、腹痛、倦怠感の他、腎臓病や肝臓病、心臓病などの持病がある人や飲みはじめなどにはまれに血液中に乳酸が過剰に溜まって筋肉痛、息苦しさ、過呼吸や意識障害を起こす乳酸アシドーシスという症状が報告されています。

<具体的な薬の名前>

・メトグルコ、グリコラン(メトホルミン)

・ジベトス(ブホルミン)

◇チアゾリジン誘導体(チアゾリジン薬)

チアゾリジン誘導体(チアゾリジン薬)とは、血液中のブドウ糖が筋肉や脂肪でエネルギーとして使われるように促すことで、肝臓がブドウ糖を新たに作り出すことを防ぎ、血糖値を下げる効果がある薬です。

また、肥大化した脂肪細胞を小さく分解することで肥大化した脂肪細胞が出す、インスリンの働きを妨げる物質をなくしてインスリンの効きを良くするという効果もありますので、インスリンの効きが悪くなっている人に向いています。

しかし、副作用として低血糖の他にむくみや急激な体重増加、肝機能障害や黄疸、心不全や骨粗しょう症などが報告されているので、注意が必要です。

<具体的な薬の名前>

・アクトス(ピオグリタゾン)

■糖の吸収を調節する薬

◇αグルコシダーゼ阻害薬

αグルコシダーゼ阻害薬とは、小腸で糖をブドウ糖に分解して消化・吸収を助けるαグルコシダーゼという酵素の働きを妨げることによって、腸からの糖の吸収を穏やかにする効果がある薬です。

そのため、この薬も食後の血糖値が高くなる人に向いており、糖尿病の初期から重度の人まで使用されています。

なお、副作用として低血糖の他に腹部膨満感やおなら、下痢といった消化器の症状が報告されています。

<具体的な薬の名前>

・ベイスン(ボグリボース)

・グルコバイ(アカルボース)

・セイブル(ミグリトール)

■インスリンの分泌を促す薬

◇スルホニル尿素(SU)薬

スルホニル尿素(SU)薬とは、膵臓のβ細胞にあるスルホニル尿素受容体に作用してインスリンの分泌量を増やすことで血糖値を下げる薬で、糖尿病の薬の中でも血糖値を下げる効果が最も強い部類に入ります。

また、作用時間が長く、1日1回もしくは2回の服用で1日の血糖値を下げ続けることができます。

しかし、血糖値を下げる効果が強いことから低血糖の症状を起こしやすい、また低血糖から空腹感が増して体重が増加しやすいという副作用がありますので、それぞれの対処法をあらかじめ知っておくことが大切だと言えるでしょう。

<具体的な薬の名前>

・オイグルコン(グリベンクラミド)

・グリミクロン(グリクラジド)

・アマリール(グリメピリド)

◇速効型インスリン分泌促進薬

速効型インスリン分泌促進薬とは、スルホニル尿素薬と同じ仕組みでインスリンの分泌を促す効果がありますが、スルホニル尿素薬よりも効果が現れるのも消えるのも早いという特徴があります。

そのため、食後だけ血糖値が高くなるような人や、インスリンの働きが弱まっている人に向いている薬です。

しかし、スルホニル尿素薬よりは起こりにくいのですが、この薬も低血糖の副作用が起こることがある他、必ず食前に飲まなければ血糖値を下げるタイミングがずれてしまいますので、注意が必要となります。

<具体的な薬の名前>

・ファスティック、スターシス(ナテグリニド)

・グルファスト(ミチグリニド)

・シュアポスト(レパグリニド)

◇DPP4阻害薬(インクレチン関連薬)

DPP4阻害薬(インクレチン関連薬)とは、小腸でDPP4という酵素の働きを阻害し、インスリンの分泌を促す効果を持つ薬です。

なぜDPP4の働きを妨げるとインスリンの分泌が促されるのかというと、DPP4は同じく小腸で分泌されるインクレチン(GLP-1)というインスリンの分泌を促したり血糖値を上げるホルモンの働きを抑えるホルモンを分解してしまうからです。

なお、この薬は血糖値の高い時にしか作用しないうえに比較的ゆるやかに効果が現れるため、低血糖が起こりにくいとされています。

しかし、低血糖が絶対に起こらないというわけではなく、また便秘や腹痛、まれではありますが肝臓の重い症状や急性腎不全などの副作用の報告があります。

また、複数の薬を併用している場合、スルホニル尿素薬と併用すると薬が効きすぎて低血糖を起こす場合もあるようです。

<具体的な薬の名前>

・ジャヌビア、グラクティブ(シタグリプチン)

・エクア(ビルダグリプチン)

・ネシーナ(アログリプチン)

・テネリア(テネリグリプチン)

・トラゼンタ(リナグリプチン)

・スイニー(アナグリプチン)

・オングリザ(サキサグリプチン)

・ザファテック(トレラグリプチン)

・マリゼブ(オマリグリプチン)

◇GLP-1受容体作動薬(注射薬)

GLP-1受容体作動薬とは、インクレチンホルモンを注射することでインスリンの分泌を促し、血糖値を上げる効果のあるグルカゴンというホルモンの分泌を抑えて血糖値を下げる効果が期待できる薬です。

先ほど、DPP4阻害薬のところでGLP-1はDPP4によって分解されてしまうとご説明しましたが、この薬のGLP-1は人工的に作られたもので、DPP4によって分解されにくくなっているので、長時間に渡ってGLP-1の働きを維持することができるようになっています。

なお、専用の注射器を用いた皮下注射で使用する薬ですが、インスリン注射とは違うものですのでインスリン療法の代用とすることはできません。

また、肝機能や腎機能に障害が起こる場合があるので、定期的に検査を受ける必要もあります。

<具体的な薬の名前>

・ビクトーザ

・バイエッタ

・リキスミア

・ビデュリオン

・トルリシティ

■その他の薬

◇アルドース還元酵素阻害剤

アルドース還元酵素阻害剤とは、血糖値を下げる薬ではなく、糖尿病の合併症のひとつである神経障害の原因物質であるソルビトールが体内に蓄積されることを防ぎ、初期の神経症状の改善効果が期待できる薬です。

ちなみに、糖尿病性神経障害とは、糖尿病の合併症の中で最も多く、主に末梢神経の働きが異常になり、手足のしびれや感覚の麻痺などが起こるものですが、この原因のひとつとして神経細胞にソルビトールという物質が貯まることが挙げられています。

そして、この薬はソルビトールを作り出すアルドース還元酵素の働きを妨げることで神経細胞のソルビトールを減らすという作用があります。

しかし、神経障害を起こしている人全てに効果があるわけではなく、使われているのは日本のみのようです。

なお、副作用としては吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛といった消化器症状の他、肝機能の異常が報告されていますので、この薬を飲む時には定期的に肝機能を検査してもらった方がいいでしょう。

<具体的な薬の名前>

・キネダック(エパルレスタット)

◇配合薬

配合薬とは、いくつかの種類の薬の効果がひとつにまとめられた薬のことで、糖尿病の治療においては作用する場所が違う種類の薬を組み合わせた配合剤がいくつか発売されています。

なお、配合薬は多くの薬を飲まなくてもよくなるので、薬の管理が楽になり飲み忘れなどが少なくなる、薬の費用が安くなるといったメリットがあります。

一方で、副作用の種類が多くなる他、治療の際の第一選択薬としては使えないといった注意点もあります。

<具体的な薬の名前>

・メタアクト(ビグアナイド薬+チアゾリジン薬)

・ソニアス(αグルコシダーゼ阻害薬+速効型インスリン分泌促進薬)

・リオベル(チアゾリジン薬+DPP4阻害薬)

・エクメット(ビグアナイド薬+DPP4阻害薬)

糖尿病の新薬とは?

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■SGLT2阻害薬

SGLT阻害薬とは、2014年に発売された新しい薬で、腎臓に作用して尿の中に余計な糖を再吸収させずに排泄することで血糖値を下げる作用があります。

また、インスリンの分泌量を変えるわけではないので低血糖を起こしにくく、その他にも利尿作用による血圧降下作用や、余分なカロリーが尿の中に排泄されることによる体重減少などの効果も期待されています。

しかし、糖分の多い尿によって尿路感染症や性器感染症のリスクが指摘されている他、利尿作用による脱水症状などの危険性もありますし、実際に脳梗塞や脱水症状からの皮疹が起きたという報告もあるようです。

何よりも、まだ発売されて日が浅い薬ですので、副作用に関してはまだすべてがわかっているというわけではありません。

ですので、この薬を使用する場合には、医師とよく相談し、普段以上に自分の体の状態をよく観察することが大切だと言えるでしょう。

<具体的な薬の名前>

・スーグラ(イプラグリフロジン L-プロリン)

・ジャディアンス(エンパグリフロジン)

・カナグル(カナグリフロジン)

・フォシーガ(ダパグリフロジン)

・デペルザ、アプルウェイ(トホグリホルジン)

・ルセフィ(ルセオグリフロジン)

■週1回でOK?新しいDPP4阻害薬

先ほどご紹介したDPP4阻害薬の中でも、ザファテックとマリゼブは週一回飲むだけで効果が持続する新しいタイプの薬で、薬効だけではなく、患者さんの負担を減らす効果も期待されています。

なぜ週一回で効果が持続するのかというと、ザファテックは薬が抜けてからもDPP4を阻害する効果が残り、マリゼブは体内で代謝されにくく、また腎臓で再吸収されて血液中に薬が長くとどまるという特徴があるからです。

しかし、有用な効果ばかりではなく、連続して服用した際の低血糖や、ごくまれに腸閉塞や膵炎を起こすという副作用の報告もありますので、必ず用法や容量を守り、飲み忘れのないようにすることが必要です。

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治療薬が処方される基準!第一選択薬とは?

糖尿病の治療薬を選ぶ際には、基本的にインスリン抵抗性(インスリンがきちんと作用するか)や、高血糖になる時間(食後か空腹時か)などをみた上で判断します。

なお、そのような基準で見ていくと、次のように第一選択薬の候補が絞られます。

インスリン抵抗性「大」

チアゾリジン薬、ビグアナイド薬、SGLT2阻害薬

インスリン抵抗性「小」

・空腹時と食後の高血糖→DPP4阻害薬、ビグアナイド薬、SGLT2阻害薬、SU薬

・食後の高血糖のみ→DPP4阻害薬、αグルコシダーゼ阻害薬、速効型インスリン分泌促進薬、SGLT2阻害薬

実際に、2013年に東京都内の医療機関で糖尿病を診察している医師にいくつかの糖尿病患者の症例を示し、第一選択薬をどうするかというアンケートを取ったところ、どの症例においてもビグアナイド薬かDPP4阻害薬を第一選択に挙げる医師が多いという結果が出ています。

ですので、実際に糖尿病で飲み薬を処方される場合には、第一選択薬としてはビグアナイド薬またはDPP4阻害薬が処方されることが多いと考えられるでしょう。

糖尿病治療での多剤併用療法とは?

多剤併用療法とは、複数の種類の薬を組み合わせて治療をすることで、糖尿病の治療においては2種類以上の血糖値を下げる効果の薬を使って目標値へ近づけるために行われます。

また、複数の種類の薬を使用することで、それぞれの副作用が弱まるという効果も期待されているようです。

なお、糖尿病の治療において配合薬などを使用して多剤併用療法を行うのは、1種類の薬をしばらく使用してみて、それでも血糖値が目標値まで下がらなかった場合です。

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飲み合わせに要注意!糖尿病で併用禁忌の薬

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■糖尿病治療薬どうしの併用禁忌

先ほどご説明したように、糖尿病の治療では複数の種類の薬を組み合わせて治療に用いることがありますが、糖尿病の薬どうしであっても併用してはいけない薬があります。

主なものを挙げると以下のようになりますが、まだ試験中のものや未検討のものも多いため、使用の際には医師に確認するようにしてください。

・すべてのスルホニル尿素薬と速効型インスリン分泌促進薬

・グリミクロン(スルホニル尿素薬)と他の種類の糖尿病治療薬

・ファスティック、スターシス、シュアポスト(速効型インスリン分泌促進薬)とDPP4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、インスリン注射

・セイブル(αグルコシダーゼ阻害薬)と速効型インスリン分泌促進薬、DPP4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬

・グリコラン、メトグルコ(ビグアナイド薬)と速効型インスリン分泌促進薬、αグルコシダーゼ阻害薬、DPP4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、インスリン注射

・アクトス(チアゾリジン薬)と速効型インスリン分泌促進薬、DPP4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬

・スイニー(DPP4阻害薬)と速効型インスリン分泌促進薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、インスリン注射

・バイエッタ、ビデュリオン(GLP-1受容体作動薬)と速効型インスリン分泌促進薬、αグルコシダーゼ阻害薬、DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬、インスリン注射

・リキスミア(GLP-1受容体作動薬)と速効型インスリン分泌促進薬、αグルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、SGLT2阻害薬

■その他の薬などとの併用禁忌

その他にも、糖尿病の治療中には飲み合わせを気をつけるべき薬や食品などがありますので、それらに注意するとともに市販薬などを購入する時には薬剤師に糖尿病であることを告げて薬を選んでもらったりする必要があります。

また、複数の医療機関を受診している場合などにも、必ず糖尿病であることや、現在はどんな薬を使っているのかといった情報をきちんと伝えるようにしてください。

なお、糖尿病で気をつけるべき薬は主に次のようになります。

【処方薬】

・非定型抗精神病薬(ジプレキサ、セロクエル)

・ワルファリン

・降圧剤

・不整脈用剤 など

【市販で手に入るもの】

・アスピリン

・メチルエフェドリン、麻黄

・ステロイド

・スピール膏

・アルコール

まとめ

いかがでしたか。

糖尿病で使用される治療薬には、大きく分けて7種類の飲み薬と、1種類の注射があります。

これらの治療薬において、最も注意するべきなのが低血糖の副作用ですので、常にスティックシュガーやブドウ糖の入ったものを持ち歩くなどの対策をしておきたいですね。

また、複数の種類の薬を使用する場合には、種類同士で併用してはいけないものがありますので、医師とよく相談して決めるようにしてください。

そして、市販薬などにも糖尿病の治療とは相性の悪いものがありますので、市販薬を購入する時には薬剤師に相談したり、主治医に処方薬として同じ効果の薬を出してもらえないか相談するといいでしょう。

なお、糖尿病の治療において最も大切になるのは食事療法と運動療法で、これと薬による治療を組み合わせることで薬の効果がより発揮されますので、日々の食事の運動も無理のない範囲で続けていってくださいね。

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